「会社案内パンフレットを作りたいのですが、どんな内容を載せればいいか分からなくて…」
このようなご相談を、私たちは日々多くいただいています。
確かに商品やサービスの紹介だけでパンフレットが完成するわけではありません。特に無形サービスや属人的な業種、あるいは商材の変動が大きい業種では「何をどう伝えるか」に頭を悩ませる方も多いのではないでしょうか。
そこで大切になってくるのが「会社案内のコンセプト作り」です。
「何を伝えたいのか?」「誰に向けて発信するのか?」という軸が明確になることで、パンフレット全体の内容や方向性も定まり、伝わる力が何倍にも増します。
この記事では「会社案内のコンセプト作り」という視点から、パンフレットでの訴求方法やブランディングとの関係性について、分かりやすくご紹介していきます。
目次
会社案内パンフレットには実はいくつかの種類があり、その目的や使用シーンによって「伝えるべき内容」が大きく変わります。
皆さんも「パンフレット=商品・サービスの紹介」と考えがちかもしれませんが、実際には商品やサービスの説明以上に、企業の姿勢や価値観、信頼性といった情緒的な訴求が求められる場面も多いのです。
特に複数の事業を展開している企業や、商品そのものが見えづらい無形サービス業では、企業のブランドイメージそのものを伝えることが重要になってきます。
これはまさに「ブランディング」の領域です。
それでは、具体的にどのような種類の会社案内パンフレットがあるのか、2つのタイプに分けてご説明します。
COMPANY PROFILE PRODUCTION
大手企業や複数のグループ会社など、いくつもの事業を並行して展開している企業の会社案内パンフレットを作る場合、最初にぶつかる壁が「一体、何をメインに伝えるべきか分からない」という問題です。
実際、製造業でも商社でも、事業の数が多岐にわたると、それぞれの商品やサービスを細かく紹介しようとすると、ページが足りないどころか、読み手にとっても情報過多になってしまいます。
仮にグループ企業が10社以上あり、エネルギー関連機器、環境機器、医療機器、ITソリューションなど、異なるジャンルの事業を多数展開している企業があると仮定します。
こういった場合よくご相談いただくのが「これらすべての事業を均等に紹介したい」というパターンです。ですがヒアリングを進めるうちに、実は“企業としての総合力”や“社会的使命”を伝えたいという真の目的が見えてきました。
その結果、会社案内パンフレットでは各事業の詳細説明にはあまり触れず、
といった、企業全体の方向性と価値観を伝えるコンセプトで紙面の構成を設計する事にいたしました。
このように、多角的な事業展開をしている場合には、個別事業の紹介よりも「全体としてどんな企業なのか」を伝えるブランディング型の構成が適しているのです。
多事業企業の場合、一つひとつの商材やサービスではなく、「どのような想いでそれらの事業を手がけているのか」、「これから社会に対して何を提供していきたいのか」という、企業の世界観を打ち出すことで、全体のストーリー性が生まれます。
商品ではなく、「会社そのもの」を売る
そうした視点で作られる会社案内パンフレットは、信頼感や安心感の醸成、企業イメージの向上に大きく貢献します。
もう一つ重要なのは、「情報の整理」です。事業数が多ければ多いほど、「全部を伝えたい」という気持ちが出てきますが、それをそのまま紙面に反映してしまうと、結局どこが強みなのか、何が伝えたいのかがぼやけてしまいます。
ですから会社案内制作においては、まず以下のような視点で情報の整理を行います。
この「共通の軸」が明確になると、パンフレット全体のコンセプトが一本に通り、紙面の伝わる力がグッと高まります。
例えば「人と社会を支えるテクノロジー企業へ」といったテーマでまとめれば、その後のページで各事業が「どのように人や社会に貢献しているか」を紹介する流れが自然に出来上がります。
こうして個別の事業紹介ではなく“企業の存在意義”を軸にした会社案内を作ることで、グループ全体のブランド価値を高めるパンフレットへとつながっていきます。
一方で、「無形サービス」や「属人性の高い業種」の場合、会社案内パンフレットにおいては商品やサービスの具体的な紹介だけでは、なかなか訴求力が生まれません。
たとえば、士業(税理士・弁護士・社労士など)、不動産仲介、コンサルティング、人材派遣、介護サービスなど。
こういった業種に共通するのは「商品が目に見えない」という点です。
「目に見えない価値」をどのように伝えるのか?
このような業種では、「商品そのものの性能」ではなく、そのサービスを提供する“人”や“企業の姿勢”が選ばれる決め手になります。
各士業の具体的なサービスの内容は、一見すると競合他社と大きな差がないように見えます。
ですが、実際に顧客が重視するのは、
など、コミュニケーション力や信頼感、相性といった「感覚的な部分」が中心です。
そこでパンフレットでは、「先生のご挨拶」「事務所の理念」「お客様の声」「スタッフ紹介」「サポート体制」など“人となり”がちゃんとしっかりと伝わる構成にすることで、「安心して相談できそうだな」という印象を与えることができます。
無形サービスの場合、お客様が購入前に「比較・検討」できる材料が少ないため、パンフレットでは「何を大切にしているか」「どのような価値を提供しているか」といった、情緒的な価値の訴求が非常に大切です。
以下のような要素が、判断基準になります:
特に「人」で選ばれる傾向のある業種では、顔写真やメッセージなどを通して“人間味”を出すことが信頼感に直結します。
ブランドではなく「信頼」を売る
無形サービス業では、「ブランド認知」よりも、「この人に任せたい」「この会社なら安心できそう」と思ってもらうことが最も重要です。
そのため、会社案内パンフレットでは自社紹介というより、「信頼獲得ツール」として活用することが成功のカギになります。
「どんな介護サービスがあるか」よりも、
など、利用者やご家族が“安心して預けられるかどうか”を判断できるような構成・写真・言葉選びが求められます。
サービスが見えないからこそ「想い」が見えるように
無形サービスや属人的な業種では、見えないものを“見える化”する力が、会社案内に求められます。
「言葉」、「デザイン」、「構成」、「写真」、これらを通じて「どんな想いでお客様と向き合っているか」「どんな未来を提供したいのか」を丁寧に伝えていくことが、競合との差別化にもつながります。
では、なぜ会社案内のコンセプトを分けて考えることが大切なのでしょうか?
一番の理由は、読み手=お客様の求める情報がそれぞれ異なるからです。
たとえば、以下のような違いがあります:
営業先に渡す場合 → 信頼性・実績・社会的評価・取引事例など、安心材料が必要
採用活動で使う場合 → 働く環境・理念・ビジョン・社員の声など、共感を得る内容が重要
株主や投資家に渡す場合 → 事業の安定性・成長戦略・ガバナンスなどが評価対象になる
このように、ターゲットごとに必要な情報はまったく違います。コンセプトを曖昧にしてしまうと、どの情報も中途半端になり、結局「誰にも響かない」パンフレットになってしまう恐れがあります。
逆にコンセプトを明確に分けて設計することで、特定の相手にしっかり刺さる内容に仕上げることができます。
「この会社は、自分たちの業界や課題をよく理解してくれている」
「自分が求めている方向性と近い。信頼できそう」
そんな風に感じてもらえることが、選ばれる第一歩になるのです。
ここまで何度か出てきた「ブランディング」という言葉。そもそもこれは、どういった考え方なのでしょうか?
ブランディングとは一言でいえば、「自社を他社と差別化し、選ばれる理由を明確にする取り組み」のことです。
ロゴやキャッチコピーだけではなく、企業の理念、行動指針、対応の姿勢、パンフレットやWEBサイトに至るまで、「企業がどう見られたいか」というイメージを統一して伝えていくことが重要です。
そのためには、以下のような問いを深掘りしていく必要があります。
これらを言語化・ビジュアル化していくことが、会社案内パンフレットにおける「コンセプト作り」そのものになります。
会社案内パンフレットは、ある意味で企業の「顔」とも言える存在で、短時間で企業の姿勢や考え方、信頼感を伝えるツールとして、初対面の相手に最もインパクトを与える場面も少なくありません。
ですから、「どんな会社として覚えてもらいたいか?」という企業のブランディング戦略をしっかり設計した上で、会社案内パンフレットの制作を進めていくことが非常に重要なのです。
会社案内パンフレットは、単に商品やサービスを紹介するツールではなく、企業の姿勢や価値観、信頼感を伝える大切なコミュニケーション手段です。
特に事業が多岐にわたる企業や無形サービスを提供する業種では「何をどう伝えるか」というコンセプト作りが、会社案内の質を大きく左右します。
誰にどのような印象を持ってもらいたいのか?
そのために、何をどの順番で伝えるべきなのか?
この視点をもとに会社案内を設計することで、自社の魅力がより効果的に伝わり、信頼や共感を得られるパンフレットへと仕上がります。
「情報を載せる」だけでなく「企業の想いを届ける」こと。
それがこれからの会社案内パンフレットに求められる本質でもありますね。